いわみ留学に参加した理由:一柳さん

1. いわみ留学を知ったきっかけ

僕は、大学の長期休みを利用して、普段行けない場所に足を運びたいという思いがありました。しかし、旅行として行くには金銭的な制約があり、回数を重ねることが難しいと感じていました。そこで、働きながら知らない土地で過ごせる「リゾートバイト」や「おてつたび」に興味を持ち、大学生のうちに「旅をしながら働く」という経験をしたいと思いました。実際に2年生の夏休みに挑戦してみましたが、仕事の内容は旅館の清掃やキッチン業務など、普段のアルバイトでも経験できるものでした。そのため、次の冬休みには、もっと学びのある仕事をしたいと考えるようになりました。

調べるうちに、総務省の「ふるさとワーキングホリデー」や「地域おこし協力隊」のサイトに出会い、その中で「いわみ留学」の存在を知りました。その言葉の中で「人口の多さやお店の数といった経済的な豊かさだけではない、『幸せのものさし』がここにはある」というフレーズに強く惹かれました。僕自身、神奈川県で生まれ育ち、「勉強して良い大学に入り、良い企業に就職する」という価値観の中で過ごしてきましたが、就職活動の早期化に伴い、漠然とした不安を抱えるようになっていました。大学3年生になり、就職活動が本格的に始まる前に、一度立ち止まり自分と向き合う時間を持ちたいと思いました。また、「必ずしも将来田舎に住みたい人向けではない」というプログラムの趣旨にも共感し、第二のふるさとを見つける機会として「いわみ留学」に参加することを決めました。

2. 参加するまでの準備

いわみ留学を知った後、僕はすぐに詳細を調べ始めました。総務省の「地域おこし協力隊」のサイトで情報を見つけ、さらに「note」で過去の参加者の体験記を読み込みました。特に、弥栄町での生活や活動の様子を具体的に知ることができたのは、大きな参考になりました。  

10月上旬にエントリーを行い、11月上旬にオンライン面接を受けました。面接では、自分が地域活性化に関心を持った理由や、いわみ留学を通して学びたいことについて話しました。面接官の方々はとても温かく、形式的な質疑応答ではなく、「どんなことに興味があるのか」「どういう経験をしてみたいか」といった会話が中心だったため、リラックスして自分の考えを伝えることができました。面接後、1週間ほどで合格の連絡をもらい、いよいよ弥栄町での生活が現実味を帯びてきました。  

合格後は、担当者の方とメールでやり取りをしながら、具体的な準備を進めました。持ち物や滞在先の環境についての説明を受ける中で、雪が積もる地域での生活が初めての僕にとって、冬の寒さ対策が重要であることを改めて実感しました。また、留学直前の1か月前には内定者研修会があり、他の参加者とも顔を合わせる機会がありました。ここで弥栄町の現状や、僕たちが行うプロジェクトについて具体的な説明を受けました。  

3. 弥栄町での生活  

弥栄町での生活は、僕にとって初めての「地方で暮らす」という経験でした。親元を離れ、自分で生活を管理するという点でも新鮮な体験でした。特に印象的だったのは、自炊の習慣が身についたことです。最初は簡単な料理しかできませんでしたが、色々と作っていくうちに豚汁を作れるようになりました。寒い冬の時期に食べる豚汁は格別で、ニンニクをたっぷり入れるのが僕のこだわりになりました。  

一方で、気温差が激しく、体調を崩してしまうこともありました。神奈川では経験したことのない寒さの中での生活は想像以上に厳しく、防寒対策の大切さを身をもって学びました。また、弥栄町は公共交通機関が限られているため、移動手段の確保が課題となりました。普段、都市部では電車やバスで簡単に移動できますが、ここでは車がないと不便に感じる場面も多かったです。僕は免許を持っていなかったので、周りの方々のご厚意で生活できていました。

4. 弥栄町の景色

冬の弥栄町は、まさに雪に包まれた幻想的な風景でした。2月に入ると、一面が雪で覆われ、見渡す限りの銀世界が広がりました。僕は神奈川県で育ったため、これほどの雪景色を実際に見るのは初めての経験でした。 

雪が降り積もる中を歩くと、足元からギュッギュッと音がする。そんな些細なことにも新鮮さを感じました。また、朝の空気は澄んでおり、太陽の光が雪に反射して輝く景色には、言葉にできない美しさがありました。都会ではなかなか味わえない自然の壮大さを実感し、「ここでしか見られない景色」があることの価値を改めて考えさせられました。

5. 参加したイベント

弥栄町での生活では、地域の方々との交流が深まる機会がたくさんありました。特に印象に残っているのは、豆腐作りや神楽祭りなど、地元の伝統や文化を体験できるイベントです。やさか表現大学での豆腐作りでは、地域の方々と一緒に手間暇かけて作った豆腐を味わい、その過程を楽しむことができました。みんなで協力して作ったものは格別の味で、心も温まりました。

また、弥栄神楽祭りでは、伝統的な舞いを目の前で見ることができ、地域の文化に対する理解が深まりました。さらに、地域のおばあちゃんたちと一緒に料理を作りながら、皆でわいわいと過ごす時間は、地域の温かさを感じる大切な瞬間となりました。

6. いわみ留学を経て

弥栄町での滞在中、僕は地域の情報を発信するプロジェクトを担当し、町の風景や施設を撮影していました。事前に撮影リストを作り、地元の方々と調整しながら進める中で、たくさんの地域の人たちと触れ合うことができました。特に、児童クラブや子ども園で遊んだり、地元の子どもたちとドッジボールやケイドロをしたことはとても楽しかったです。体力的には少しきつかったけれど、子どもたちの元気に引っ張られて、心がとても温かくなりました。  

撮影を進めるうちに、地域の観光情報や施設の情報発信が足りていないと感じました。弥栄町は観光地ではないので、外から来る人たちや移住希望者向けの情報があまり届いていないことに気づきました。地元の人たちと話すことで、もっとリアルな情報を提供することの大切さを実感しました。  

いわみ留学を通じて、都市と地方の違いを体験し、それぞれの魅力や課題を実感できたことは大きな収穫でした。地域の人たちとの交流を通じて、「変化を受け入れること」や「失敗を恐れずに挑戦すること」の大切さも改めて感じました。地域の魅力は、実際に足を運んで、住民と関わることで初めて伝わることが多いと実感しました。パンフレットやウェブサイトではわからない、その土地ならではの空気感や人々の温かさに触れることで、地方にはまだまだ知られざる魅力がたくさんあることに気づきました。  

この経験を活かして、今後も地域の魅力を発信し、日本の伝統文化や地方の暮らしについてもっと深く考えていきたいと思っています。そして、地域と関わりながら地域活性化に貢献できる方法を見つけていきたいと考えています。

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