いわみ留学に出会うまで
2024年5月に前職を退職してから、ひたすら引きこもって眠るだけの毎日を過ごしていました。「何かしなくては!」と思いつつも、なかなか行動に移せずにいた7月の終わりごろ、偶然Instagramで「いわみ留学」の広告を見かけ、このプログラムの存在を知りました。
振り返ると、1月にEテレの番組『石見銀山物語』を見て、石見神楽やいわみ地方のことを知ったのが最初のきっかけだったと思います。その番組が印象に残り、「いつか行ってみたい」という気持ちがあったこと、そしてこの停滞した生活を変えたいという思いから、参加を決めました。
さらに、noteの記事や紹介動画を通じて、弥栄の風景や有機農業への取り組み、神楽などに強く惹かれました。これまで農業とは無縁の生活でしたが、以前から興味があり、新しいことに挑戦する良い機会だと感じ、申し込みました。
参加するまで
7月下旬に申し込み、8月2日にオンライン面接を受けました。その日のうちに合格の連絡をいただき、弥栄に行くことが決まりました。ただ、実際に参加するのは2月から3月を選んだため、それまでの半年間は「参加が決まっているだけ」の状態でした。
その間、時々「いわみ留学」のnoteを読んだり、「YASAKA COMMONS」のホームページを見たりしていましたが、普段の生活は特に変わりませんでした。ただ、時間はたっぷりあったので、これまでできなかったことを片っ端から試しているうちに、気づけば半年が過ぎていました。
12月に「ユタラボ(豊かな暮らしラボラトリー)」から事前研修の案内があり、1月中旬に受講しました。研修では、滞在中の目標を決めたり、どのような意識で生活するかを考えたりしました。また、実際に暮らしている方の体験談を聞くことで、ぼんやりしていた弥栄での生活が少しずつイメージできるようになりました。
同じく12月後半、「YASAKA COMMONS」のSlackが開設され、「今週の弥栄町」というチャンネルで現地の様子が発信されるようになりました。どんな人がどんな生活をしているのか、自分は何をすることになるのか。まだ分からないことも多かったですが、Slackを通じて少しずつ不安が和らぎました。
1月には、当時いわみ留学に参加していた谷口さんが、オンラインで内定者研修をしてくださいました。弥栄での暮らしのリアルな話や1日のスケジュールを詳しく聞くことができ、これまで漠然としていた生活のイメージが少し明確になりました。それと同時に、不安よりも楽しみな気持ちがどんどん大きくなっていきました。
それでも、一番の不安は「弥栄についての情報がほとんどないこと」でした。どんな町なのか? どんな人がいるのか? どんな生活が待っているのか? ネットで調べても詳しい情報は出てこず、具体的なイメージが持てないままの参加でした。
でも、その分想像がふくらみ、ワクワクする気持ちもありました。情報が少ないからこそ、実際に行って確かめる楽しみがあるだろう、そう思いながら、弥栄へ向かう日を待っていました。
弥栄町での生活

2月に弥栄へ来てから、ひたすら雪が降り続いていました。「今日が一番降っている!」という日を何度も更新したほどです。都市部で暮らしていた私にとって、こんなに雪を見るのは初めての経験で、毎日白銀の世界に心を躍らせていました。弥栄でもここまで雪が降るのは珍しかったそうで、寒さや雪道での運転など大変なこともありましたが、この時期に来られてよかったと感じました。

実家暮らしだった私にとって、シェアハウスでの生活は少し不安がありました。でも、ハウスマスターの吉田さんのおかげで、そんな心配はすぐに消えました。出勤時間が違うこともあり、帰宅後に話したり、それぞれ好きなことをして過ごしたりと、程よい距離感で快適な毎日を送ることができました。最高のハウスマスターでした。

滞在中のスケジュールは、週に2〜3回、小松ファームさんでの農業体験。それ以外の日は、体験村での活動や動画撮影などに取り組みました。忙しすぎることもなく、毎日がとても充実していました。弥栄に来てから初めて挑戦することが多く、新鮮な発見の連続で本当に楽しい日々でした。

また、地域の活動にも積極的に参加しました。月に一度開催される「やさか表現大学」では、弥栄の暮らしや自然について学び、2月は豆腐作り、3月は藁細工を学びました。さらに、地域の方が開いてくれた料理教室では、ピーナッツ豆腐やこんにゃく、角寿司といった郷土料理を教わりました。週に一度、小中学生が放課後に集まる「マジスクール」にも参加し、子どもたちと遊んだり話したりと、幅広い世代の人々と関わる機会に恵まれました。

これまで年齢の離れた人と関わることが少なかった私ですが、弥栄でさまざまな人と触れ合う中で、人と話すことの楽しさを実感しました。人見知りをする暇もないほど、楽しい時間がいっぱいで、本当にありがたかったです。

2月に極寒の日々を過ごしたからこそ、3月に入ってからの暖かさがより一層心地よく感じられました。雪が解け、青々とした草木や梅の花が咲き始める景色を見て、春をこんなに体感したのは人生で初めてかもしれないと思うほど、季節の移ろいを肌で感じることができました。
イベント
2月中旬、シェアハウスのある栃木の集落で「モルック大会」が開催されました。大会を通じて、今まで関わる機会のなかった集落の方々とお話しすることができ、とても嬉しかったです。モルックは初めての体験でしたが、ご高齢の方から子どもまで幅広い世代の人が一緒に楽しめる、素晴らしいスポーツだと実感しました。
また、弥栄では毎月第3日曜日に「や市」という朝市が開かれています。3月のや市では、売り子として参加し、体験村のブースに自作の編み物を置かせていただきました。お客さんと直接お話ししながら作品を手に取ってもらえたことが、これまでにない喜びとなりました。さらに、や市でもモルック大会が開催され、栃木だけでなく弥栄の方々ともモルックを通じて一体感を味わうことができました。

今回の滞在で最も楽しみにしていたのが、石見神楽でした。3月初旬には「弥栄神楽まつり」が開催され、一日中神楽を鑑賞できる貴重な機会となりました。4つの社中が参加しており、それぞれ異なる魅力を持っていて、さまざまな神楽の世界を堪能できたのが嬉しかったです。

3月に行われたや会議では「オーガニックで繋がるはまだ」がテーマでした。有機農業と地域の関わり方やどうしたらもっとよい町になるかなど、一日お話を聞いて、自分はどういったことで地域に貢献できるだろうかと考えるきっかけとなりました。
いわみ留学を経て
2ヶ月のいわみ留学を終えて、一番強く思うのは「弥栄に来てよかった」ということです。

車を運転しながらふと景色を眺めて、思わず笑顔になってしまうくらい、ここは本当にきれいな場所でした。そして、ここで出会った人たちはみんな、自分の考えをしっかり持っていて、かっこいいなと感じました。今まで出会ったことのない人たちと関わる中で、新しい考えが生まれたり、逆に自分が大切にしてきたことに気づいたりすることもありました。

また、弥栄について考える時間が増えたことで、今まであまり意識してこなかった自分の地元・埼玉のことももっと知ってみようと思うようになりました。
初めて農業を体験したり、写真編集を教わったり、目的を持って映像制作をしたりと、さまざまな経験をさせていただきました。どれも貴重な時間だったと思います。
今回は冬から春にかけての弥栄しか知ることができなかったですが、今度は四季折々の弥栄を感じてみたいです。